茶色い沼からこんにちは

めせもあ。(MeseMoa.)の茶色担当の人をひっそり推してる女性の一人遊びです

魔法のステージと谷口吉田の話(野崎弁当ソロライブ)

5/26 野崎弁当さんのオンラインソロライブが行われた。
株式会社DD所属アーティストが日替わりで一時間ずつ(研修生は30分)枠を与えられて、セトリから衣装まで一人で考えて披露するライブ。その中の一枠だ。
ご本人がセトリと内容について語ってるので大丈夫とは思いますが
lineblog.me

ここからネタバレしかありませんので読みたくない人は引き返してください。


creamさんの配信サービスで購入した動画は何度も見返せるというので、わりと気楽な気持ちで見始めた。
もちろん楽しみな気持ちは標準装備なので、そこはもう当然。
普段のライブでは「ふわーっ」となってしまって、ライブ後の特典会でも手紙でも伝えたい言葉が上手く出てこないので、今回は思ったことをメモしながらライブを見ることにした。そういった意味での気楽さだ。
私はかつての記事で野崎さんは魔法を使えると書いた。
野崎弁当は魔法を使えるって話。 - 茶色い沼からこんにちは
MeseMoa.のソロコーナーでも片鱗を見せるけど、最近は四肢が千切れて飛びそうだったり、謎に鬼気迫ってたり、上手から下手まで高速で平行移動していたり
それはそれで面白いし大好きだし野崎弁当なんだけど、それだけじゃないんですよ最近ファンになった方にこそ観て欲しいんですよって思ってた。
野崎弁当の表現力はこんなもんじゃないんだって。
今回は一時間、野崎さんが好き放題やれるソロライブ。もしかしたら、あのステージを別の空間に変えてしまう魔法が観られるかもしれない。
でもな、生のステージじゃないからどうなんだろうな。観られたらいいな。
そんなふうに思っていた。

さて、ここからザックリと簡単にレポを落とします。感想が多い少ないも感想の内容も本当に個人のアレなんで許してください。

眼鏡にスーツ、その上に上着を羽織った穏やかな喋り口の野崎さんが椅子に腰かけノートを朗読します。そして、暗転後明るくて穏やかな声なのにどこか調律のおかしさを感じさせるテンションで
「今日は谷口のライブに~」とマネージャー吉田称する野崎さんが前説を始める。

カオス。

「いや谷口誰だよ、オードリーの親友かよ。野崎弁当のライブ観に来たんだよ。ていうか、吉田ってだれ?」
などと、私は茶化しながら観ていました。でも、その声とテンションにゾワッとした何とも言えない恐怖を感じていました。
そして音楽が始まり、上着を脱いだNSスーツのいつもの野崎さんが現れて、私は「なんだよ」って言いながら物凄くほっとしたんですね。この先のことなんて予想もせずに。

「ON」 ほとんどセンターにいたことが無かった野崎さんがセンターで歌い出して感動したんですよね。
あの頃「好きな曲は?」の問いに「ON、僕が目立つから」って答えたことがあり可愛いなぁって。
CDとくらべてわかりやすく歌い方が変わっている曲です。「きみのとこまで」の部分が前は音程の上がり方が急角度だったんですけど今は緩く柔らかく聴きやすい音ですね。
あと、最後のポーズはぜっちゃんと対になるウーロン茶のポーズなので、それもまた感動ポイント。

MC 汗だくなこと、水分休憩及び汗拭きタイムをちょくちょく挟むこと、緊張のせいで「ライブ前の記憶がない」ことなど。

「モンスター」 Rの反転をどうしたらいいかわかんなかったのでカタカナ表記で。セクシー。拘束ポーズセクシー。こういう男性的な激しめの曲が似合いますね。
あと、この裏声綺麗ですよね。なんか色気があって意外と儚い感じで。

MC モンスターを選んだ理由。

「今だけは」 踊りが今回のライブで一番野崎さんらしいっていう感想を持ちました。個人の見解です。あと、キーが高い曲ですね。女性でもキーを変えずに歌えるので、声が低めの野崎さんにはきつかったと思う。
それが「切なさと切実さ増し増しver.」みたいになってましたね。リラブはカッコ良くてね、切なさよりもカッコいいというかクールというか。

MC 今だけはを選んだ理由。質問コーナー(ボックスを取りに行ったけど、ステージ端に置いておいたのを忘れて戻ってくる)。「吉田について→言われても、パッと出てこないんですよね。吉田ってやつがいたような気があるんですけど。思い出が出てこない。なんだったろうな。わかんないんでパスします」 ボイスドラマについて 電波環境が良くなること

「大逆転ディーラー」これは大正解だし優勝だし大賞ですよね。セリフ全部言ったのも最高に素晴らしいし天才だし歌も合ってるし、公開もされてるから特にいうこともないんですが、表情の面でいうとしみじみと
「この人は自分のどんな表情が魅力的なのかをちゃんとわかってるんだな」って思いました。自分の魅せ方をわかってるってアイドルとしても演技者としても重要なことだとです。
そして、額に寄る皺に挟まりたいって思ったのは私だけじゃないと思います。

MC 大逆転ディーラーを選んだ理由 MeseMoa.では披露する機会のないえちえち弁当 つるてぃさんの「早く」に感銘を受けた話。

「センチメンタル」 本家が「今」のセンチメンタルだとしたら、野崎さんは「過去」。郷愁のセンチメンタルって感じました。
 思いが強すぎて伝えられなかった気持ち、すれ違ったまま離れた幼い別れ。だからこそ思い出は強烈に色濃く美しく残って、ときに胸を掻きむしるほどのセンチメンタルに襲われる。
そんな恋、ありませんか?

MC 突然投げ込まれるスケッチブック「今日のセットリスト」。すべての最初の文字を繋げて読むと浮かび上がるメッセージ「お も い だ せ」。
   頭を押さえて倒れ込む野崎さん。穏やかな、でも調律が違うような優しいけどゾッとする声「思い出してくださいよ。あなたは誰ですか? いつまで自分のことを野崎弁当だと思っているんですか?」


ここから始まるストーリーで私はメモを取る手を止めました。いや、止めたのではなく書くことが出来なかった。飲まれた。圧倒された。
恐怖に身じろぐ谷口に、トモダチだと自称する吉田が谷口の罪を語る(頭を抱えているので、きっと脳内に響いているのだろうと推測される)。
谷口と吉田はトモダチだったが、谷口は吉田に対して罪を犯した。吉田は谷口を殺したいほど憎み、この世から消すための罪を犯した。そんな結末に耐え切れない谷口は
ちょうどいい器の野崎弁当の中に逃げ込み、罪の記憶から逃れるために自分は谷口ではなく野崎弁当だと思い込むようになってしまった。そんな谷口を止めるために吉田も野崎弁当の中に入った。
それが谷口と吉田の物語。野崎弁当の中にある108の人格の中の二人。
その物語が語られたあとに「きみがきみであることを思い出して欲しいから」「これは君の罪と罰」「そして、僕の罪と罰」という吉田の言葉で始まる、おそらく谷口の「I AM」。

「I AM」 何かに怯える表情。「戦うんだ」という声に怯み、「僕は僕だ」と歌い、はっとしたように目を開いたあと、手を震わせて無の表情。がっくりと膝をつく。
脅え耳を塞ぎ、落ち着きなく周囲を見渡し頭を抱え手で何かを振り払い、降りてくる「変わらなきゃ」などの言葉に苦悩し、「僕は僕だ」という言葉に逃げまどう。
そして、最後「強くなれ」の声に諦めと絶望の表情を残して音楽は止まり、「僕は強くなれなかった」軽く拳を空に打ち付けてから、「自分に負けたんだ」と谷口はほんの少し自嘲の笑みを浮かべてステージを去る。

「戦うんだ」と言われても戦うことが怖い。「変わらなきゃ」って言われても変われない。「強くなれ」って言われても弱い。
「自分であること」から逃げたくて、でも自分からは逃げることは出来なくて、自分という存在はいつでもいつでも付いて回る。そのことに絶望してしまう。
かつての自分の中に、もしかしたらきっと今の自分の中にもある弱さ。
私は野崎さんを眩しい光の中にいて正しいことをいう人だと思っていたから、この解釈を作って演じたことに衝撃と救いを感じてしまった。
かつての自分を掬い上げてもらった気がした。

MC 暗転後、ぼうっと浮かび上がる光。その中、椅子に腰を掛けた吉田が浮かび上がる。
「僕のお話は、ここでおしまいです」
先ほどまでのどこか調子のおかしい、人を不安にさせる明るさは鳴りを潜め、穏やかで優しい声の吉田が観客に語り掛けます。
このステージで観客が観たものを説明します。野崎弁当の中にある二つの人格、谷口と吉田の存在と関係性。
罪の記憶から逃れるために野崎弁当に成り代わろうとする谷口と、それを止め谷口に自分自身を思い出させて再び眠りにつかせようとする吉田。
永遠に繰り返されるこの世界を「それでいい」と肯定する吉田の表情には不思議と希望と慈愛がある。
そして、谷口と自分(吉田)に向けてお別れの歌「BlackRose」を歌い始める。

「Black Rose」 低音綺麗に出るようになりましたね。聴きやすいなぁと。さておき、吉田の表情は「それでいいのです」と穏やかに言い切ったわりには冷たい。
少しの苛立ちも含んだような上着を脱ぎ、ネクタイを弛める。そして間奏の間に頭を片手で押さえよろめきながら、まるで誰かに触れるように手を上げ一瞬口元を綻ばせ、またよろめく。
そこから最後のサビに入るのだが、それまで冷たく淡々とした表情だった吉田は胸をかきむしるようにして絶唱する。
「さぁ、振り出しへとリピート」この最後の歌詞の一瞬前、ちらりと吉田は笑う。優しくない、何か企むような冷たい笑い方。だが、この詞を歌う吉田はどこか虚無感に溢れている。
そして、疲れ果てたような表情でスッと背中を向けるのだ。その姿は、私の目には今にも泣いてしまいそうに見えた。

そうやって本編が終わる。

谷口と吉田のことに想いを馳せる。吉田が谷口に自分自身を思い出させたとき、谷口が開口一番言ったのはこのセリフです。
谷口「吉田……違う、吉田、俺が悪かったんだ、ごめん、俺が、吉田」
谷口は吉田に対して罪を犯そうと思ったわけではないんじゃないだろうか。
谷口の持つ弱さ臆病さが何かしらでまかり間違って、トモダチだった吉田を裏切るような形になってしまったのではないだろうか。
吉田「そしてきみは罪の記憶から逃れたいと思うあまり、自分を野崎弁当だと思い込むようになってしまったんだ。だから僕も野崎弁当の中に入ったんだ。きみを止めるために」
吉田にこの世から消された谷口は魂だけの存在だから野崎弁当の中に入り込むことが出来た。そして、それを止めるために野崎弁当の中に入り込んだということは、吉田もこの世のものではない。
吉田「だから、僕も罪を犯した。きみをこの世から消すために。きみはその結末に耐え切れなくて、ちょうどいい器の野崎弁当の中に逃げ込んだんだ」
この、谷口が耐え切れなかった結末とは、「吉田を何かの間違いで裏切ってしまう形となり、その結果吉田が谷口を殺し自分自身も殺してしまった」という結末なのではないか。
谷口はその罪と結末にずっと苦しんでいる。自分という存在から逃げ出したいと思っている。そして野崎弁当に成り代わって罪から逃げようとするたびに吉田が現れ「僕は僕だ」と
残酷な宣告をされてしまう。誰しも「自分であること」から逃げられない。
では吉田はなぜ、谷口を追い続けるのだろうか。
「野崎弁当のため」と言いながら、「それでいいのです」と微笑みながら、「Black Rose」を歌う彼の表情に優しさや穏やかさはない。
無関係な野崎弁当を守るためと理由付けしながら、別の人間に成り代わって罪を捨ててリセットしようとする谷口を追い詰め苦しめることが復讐だからか。
それだけではない気がするのだ。
リピート、繰り返し、そうやって谷口を追い続ける吉田の背中に、私は疲れと悲しみを感じてしまったのです。
トモダチだった谷口に自分と向き合って欲しい。罪を真正面から受け止めて欲しい。そして、そのうえで谷口を許したい。
そんなふうに思えてしまうのだ。
まぁ、すべて私の妄想なんですけども。


最近ファンになった人こそ野崎弁当のソロを観て欲しい。そう最初に書きました。
「野崎弁当の表現力はこんなもんじゃない」「ステージを別の世界に変えてしまう魔法」
覚悟が足りなかったのは私の方だった。私の想像のもっともっと先を行く人でした。私はとんでもない人を推していた。

ところで、今まで出てきた野崎弁当の人格ですが2ペアですよね。「野崎弁当(藤兵衛)と蘭千代」そして「谷口と吉田」。
対になる存在が必ずいるのだろうか。108の人格。奇しくも偶数です。
それならば
ノッコさんと対になる人格っているんでしょうかね??(ノッコさん→野崎弁当の中にいる、餡団子が大好きな人格。声が高い。むすたま。に出てきた)

それでは、このライブの感想を終わり──、あ、ラストの「エビバデダッシュ」があった。
「エビバデダッシュ 野崎さん本当に大好き!! めちゃ可愛い。ステージをあんな走り回って裏回って戻ってくるなんて普通しないしさすがの終わり方。

あれが、野崎弁当さんだったのかはわからないですけどね。


おしまい。